標準英語と非標準英語(Standard vs Non-standard English)

C1 · 上級文体とフォーマル度

She ain't coming. They was late. I seen him. Them books. 規則のある本物の英語ですが、標準英語ではありません。

このレッスンで学ぶこと

  • “ain't” は広く使われる非標準の否定形で、文によって主に am not / isn't / aren't / hasn't / haven't の代わりになる。くだけた会話や方言ではよく聞くが、改まった文章では避ける
  • 非標準の方言では、主語に関係なく1つの動詞の形を使うことが多い:they was、we was、it don't
  • 非標準の話し言葉では、標準英語で過去形を使うところに過去分詞を使ったり、その逆をしたりする:I seen it、he done it
  • 非標準の話し言葉では、“them” を名詞の前に置いて指示語として使うことがある。標準英語では “those” を使う:them books
  • 「標準/非標準」と「フォーマル/カジュアル」は別のものさし。isn't のような短縮形は標準英語(ただしくだけた形)で、ain't は非標準
  • 二重否定(I don't have no money)も代表的な非標準の特徴で、詳しくは「二重否定」のレッスンで扱う。ここでは日本語話者がつまずきやすい点だけを確認する

でたらめな「間違い」ではなく、本物の方言

非標準英語は、めちゃくちゃな英語でも「壊れた」英語でもありません。さまざまな英語の方言を話す何百万人もの人に共有された、一貫した独自の規則に従っています。標準英語は、学校で教えられ、改まった文章や試験で求められる種類の英語にすぎません。非標準の形は標準とは違いますが、同じように規則的です。ただ、社会的な受け止められ方が異なります。

日本語でも同じことがあります。「見れる」「食べれる」のようなら抜き言葉や、各地の方言は、どれもはっきりした規則があり、話し言葉では広く使われています。それでも、改まった文章や試験では標準的な形が求められますね。なお、英語には言葉の「正しさ」を決める公的な機関がありません。“standard English” は、実際の使われ方や辞書、文法書にもとづく慣習で、特にイギリス英語とアメリカ英語という、同じように正しい複数の標準があります。

"She ain't coming. (非標準)"
"She isn't coming. (標準)"

“ain't”:何にでも使える否定形

“ain't” は、おそらく最もよく知られた非標準の形です。文によって主に am not、isn't、aren't、hasn't、haven't の代わりになる、使い道の広い否定の短縮形です。洋楽や海外ドラマ、映画ではしょっちゅう耳にします。だからこそ、どこで使ってよくて、どこでは使わないのかを知っておくことが大切です。

"I ain't ready. (= I'm not ready.)"
"She ain't got a car. (= She hasn't got a car.)"

主語と動詞の一致がそろえられる

多くの非標準の方言では、標準英語のように主語に合わせて動詞の形を変えるのではなく、どの主語にも同じ形を使います。いちばんよくある例は、単数にも複数にも “was” を使う形です。

日本語の動詞は主語によって形が変わらないので、日本語話者にとって “they was” は自然に出てきやすい形です。ネイティブの方言にも実際にある形ですが、試験や改まった文章では間違いとして扱われます。標準英語では、複数の主語には were を使います:“They were late.”、“We were hoping you'd come.”

"They was late."
"We was hoping you'd come."

不規則動詞の形がそろえられる

非標準の話し言葉では、標準英語で過去形を使うところに過去分詞を使うことがあります。2つの形が1つにまとまってしまうのです。不規則動詞を単純にしようとする傾向で、日本語のら抜き言葉が可能の形を単純にしているのと少し似ています。

標準英語では “I saw him yesterday” と言います。yesterday のように終わった過去の時点を表す語があるときは過去形です。「昨日彼を見た」を “I have seen him yesterday” とするのも誤りです。already と一緒に使う場合、イギリス英語では現在完了形(“He has done it already”)が好まれ、“He did it already” は主にアメリカ英語でよく使われます。どちらも標準英語で、非標準なのは “He done it” だけです。

"I seen him yesterday. (標準:I saw him yesterday.)"
"He done it already. (標準:He has done it already. / He did it already.)"

指示語としての “them”

一部の非標準の英語では、標準英語で “those”(「あれらの〜」「その〜」)を使うところで、複数名詞の前に “them” を置きます。標準英語の “them” は目的格の代名詞(“I like them”、「私はそれらが好きです」)だけで、名詞の前に置く指示語にはなりません。

"Them books are mine. (標準:Those books are mine.)"

注意

✗The committee ain't finished reviewing them applications yet. (in a formal report)
✓The committee has not finished reviewing those applications yet.

非標準の形は、くだけた会話や方言では自然ですが、改まった文章や試験、ビジネスの場では誤りとみなされます。ビジネスメールに方言やら抜き言葉を書かないのと同じです。

✗I didn't see nobody at the party.
✓I didn't see anybody at the party.

「パーティーでは誰も見かけなかった」:標準英語では否定は1つで十分です。didn't + anybody、または saw + nobody にします。二重否定は英語にも存在しますが、方言やくだけた話し言葉の非標準の形です。

✗They was very kind to us.
✓They were very kind to us.

日本語の動詞は主語によって形が変わらないため、was をすべての主語に使ってしまいがちです。方言には実際にある形ですが、標準英語では they / we / you の後は were です。

✗ain't や them books を、何の規則もないでたらめな間違いだと考える。
✓実在する英語の方言で広く使われている、一貫した規則的な特徴として理解する。

非標準の形には、それ自体の文法があります。標準英語の「壊れた」版ではなく、別の種類の英語です。日本語の方言が「間違った日本語」ではないのと同じです。

✗isn't、don't、I've のような短縮形を、ain't と同じく非標準だと考える。
✓短縮形は標準英語(完全な形よりくだけているだけ)で、ain't は非標準。

「標準/非標準」と「フォーマル/カジュアル」は別のものさしです。とても改まった文章では完全な形を使いますが、isn't のような短縮形が方言の特徴になることはありません。

日本語と比べてみよう

日本語の「誰も〜ない」「何も〜ない」は、「誰も」「何も」と動詞の「〜ない」を組み合わせて否定を作る

日本語話者にとっていちばん大事なポイントです。「誰も見なかった」を、単語帳の「誰も=nobody」と「見なかった=didn't see」をつなげて訳すと “I didn't see nobody” になります。「何も持っていない」なら “I don't have nothing” です。英語では、これはただの間違いではなく、“I ain't got no money” と同じ非標準の方言の特徴そのものです。試験や改まった文章では誤りとされます。標準英語では否定は1つだけです:“I didn't see anybody” / “I saw nobody”、“I don't have anything” / “I have nothing”。

日本語にも「標準語」と「方言」、そして話し言葉で広く使われるら抜き言葉のような形がある

この感覚がそのまま役に立ちます。方言やら抜き言葉が規則的なのに改まった場面では避けられるように、“I seen” や “they was” も規則的ですが非標準です。理解はできるようにしておき、試験や改まった文章では使わないようにしましょう。ただし注意点が2つあります。まず、英語には公的な基準を決める機関がなく、標準は実際の使われ方や辞書、文法書から生まれたもので、イギリス英語もアメリカ英語も同じように正しい標準です。次に、「標準/非標準」と「フォーマル/カジュアル」は別のものさしです。“isn't”、“don't”、“I've” は標準英語で、完全な形よりくだけているだけです。日本語でいえば、です・ます体と「だ」で終わる普通体の違いのようなもので、どちらも正しい日本語です。一方、“ain't”、“they was”、“I seen” は、どんなにくだけた場面でも非標準のままです。

💡 「誰も見なかった」→ I didn't see anybody. 標準英語では否定は1つだけです。

💡 短縮形(isn't、don't)は標準英語です。ain't、they was、I seen、them books は非標準です。

💡 標準英語の them は目的格の代名詞だけです。名詞の前では those を使います。

実際の場面:小説の会話文

"You ain't seen nothing yet," she laughed, tossing them books onto the table.

(作者は、登場人物に本物らしい声を与えるために、あえて非標準の形を選んでいます。日本の小説で登場人物に方言を話させるのと同じ工夫です。)

練習

練習問題 1 · 正しい説明を選びましょう

'Ain't' is best described as...

練習問題 2 · 正しい説明を選びましょう

'They was late.' This is an example of...

練習問題 3 · 標準英語の形を選びましょう

'I seen him yesterday.' In standard English, this would be...

練習問題 4 · 標準英語の単語を選びましょう

'Them books are mine.' In standard English, 'them' here would be replaced with...

練習問題 5 · 正しい説明を選びましょう

Non-standard English forms like 'ain't' and 'them books' are...

練習問題 6 · 標準英語の形を選びましょう

'He done it already.' In standard English, this would be...

練習問題 7 · これらの形が自然に使われる場面を選びましょう

Non-standard grammatical features are most likely to appear naturally in...

練習問題 8 · 標準英語の形を選びましょう

'We was hoping you'd come.' The standard-English equivalent is...

練習問題 9 · 標準英語に書き直しましょう

Rewrite in standard English: 'She ain't got no time for that.'

練習問題 10 · 標準英語に書き直しましょう

Rewrite in standard English: 'I never seen them books before.'

練習問題 11 · グループに分けましょう

She isn't coming.
She ain't coming.
They were late.
They was late.
I saw him yesterday.
I seen him yesterday.
Those books are mine.
Them books are mine.

0 / 8 分類済み

練習問題 12 · よくある間違い:「誰も〜ない」を否定2つで訳す

Japanese: "オフィスでは誰も見かけなかった。" Which English translation is standard English, as expected in an exam?

クイックチャレンジ

5つの短い問題で、覚えたことを確認しましょう。

問題 1 / 5

スコア:0/0

Non-standard English forms should be understood as...

学んだこと

  • 非標準英語には独自の規則があります。壊れた文法ではなく別の種類の英語で、日本語の方言と標準語の関係に似ています。
  • “ain't” は何にでも使える非標準の否定形で、主に am not / isn't / aren't / hasn't / haven't の代わりになります。
  • 非標準の方言では、主語と動詞の一致(they was)や不規則動詞の形(I seen、he done)がそろえられることがよくあります。
  • 非標準の話し言葉では “them” を名詞の前に置くことがあります(them books)。標準英語では those を使います。
  • 「誰も〜ない」「何も〜ない」は、標準英語では否定1つで表します:I didn't see anybody(I didn't see nobody ではありません)。
  • 標準はフォーマルという意味ではありません。isn't のような短縮形は標準英語です。英語には公的な基準機関がなく、イギリス英語もアメリカ英語も同じように標準です。
  • 非標準の形がふさわしいのは、くだけた会話、方言、小説の会話文です。改まった文章や試験では標準英語が求められます。
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